塗装とは色々なものに塗料を塗ることで、色鮮やかに見栄えを良くしたり、目立つ色を塗る事で注意や危険を示すほか外部から対象物を保護する役割を持っており、建築や工業製品等においてとても重要な作業工程であり機能性をもった表面処理です。また環境対策としても需要があり、例えば建物や構造物の屋根・外壁に遮熱・断熱塗料を塗ることで、エアコンなどによるエネルギー消費を軽減したり、高速道路や橋梁などの鉄骨に重防食塗装をすることで、防錆力を高くし老朽化による錆や損傷など劣化を遅らせることで、修復工事にかかるエネルギーを軽減したりと特殊な性質を兼ね備えた塗装もあります。

塗装と一言で言ってもさまざまな分野があり簡単に分けても建築塗装・金属加工塗装・車両塗装・木工塗装などがあり、塗り方や必要になる道具・設備なども全く変わってきます。

塗装の種類 

塗装の種類には色々なものがありますが、それぞれ特徴があり対象物がどんな製品・素材か、形状・大きさや物量がどれくらいか、どのような状況下で使用するか、目的によって適切な塗装を考える必要があります。

それぞれの塗装の方法、特徴です。

1、溶剤塗装

溶剤塗装とは、樹脂塗料を有機溶剤であるシンナー等で溶かして粘度を調整し、スプレーガンや静電ガンで被対象物に吹き付け塗料の膜を作り、常温乾燥または焼付による乾燥で塗膜を完成させます。溶剤塗装の特徴は適応する被対象物(鉄・非鉄金属・木材・プラスチック等)の種類が多く、色の調整がしやすい為あらゆる色を再現出来ます。また近年では有機化合物の極端に少ない人体・環境に優しい水性塗料も多く使われるようになってきています。

1-1、常温乾燥塗装

常温で乾燥させるため、気温に影響されやすく完全に乾燥するまでに時間が掛かることがデメリットですが、条件に縛られることが少なく、乾燥炉に入らない大型のものや、板厚が均等でない金属、高温に耐えれないプラスチックや電気関係が付いている物でも塗ることが出来ます。また塗料にもよりますが、原色が多くあり調色がしやすい為、メタリックやパールも含めありとあらゆる色を再現出来るのも特徴です。

1-2、焼付塗装

焼付塗装には一般的には溶剤塗装と粉体塗装の2種類があり、乾燥炉で100~200℃位で加熱して塗膜を形成します。その為短い時間で完全に乾燥させることが出来るメリットがあり、短納期にも対応が可能です。また、塗料の種類にもよりますが、塗料の密着がよく塗膜が強固で、耐久性や耐摩耗性、対候性にも優れている為、自動車部品や建築部材、ありとあらゆる物に活用されています。ただし乾燥炉などの熱を加える設備が必須であったり、熱で溶ける材質には使えないなどデメリットもあります。

1-3、静電塗装

静電塗装とは、塗料を静電気の力を利用して対象物の表面に均一に塗布する塗装方法で、溶剤塗装・粉体塗装の2種類があります。静電塗装は塗装対象物にアースで+極に、静電塗装機器で高電圧をかけ塗料にマイナス極を帯電させることで、対象物に塗料が引っ張られ塗着する仕組みです。その為、余計な塗料が周りに飛散せず、しっかりと対象物に塗料が付着する為、使用する塗料を最低限に抑え効率をよくすることでコストを抑える事ができます。また溶剤塗装の場合は、電気の抵抗値を調整する為の特殊な専用シンナーを使用します。

2、粉体塗装

粉体塗装とは、顔料や硬化剤を細かく砕いたパウダー状の塗料を静電気の力を利用して対象物に付着させ、加熱する事でパウダー状の塗料を溶かし乾燥させ固めることで塗膜を形成させる方法です。その為、シンナーなど揮発性有機化合物が不要で、パウダー状の塗料がそのまま塗膜となるため塗膜を厚く形成することができます。また溶剤塗装との大きな違いは、有機溶剤を含んでいないところです。ですので人体・環境にも優しい塗装方法といえます。

塗装の工程(ここでは主に金属塗装について説明します)

塗装工程は大きく分けて、前処理、下塗り、中塗り・上塗り、乾燥・仕上げとあります。

1、前処理

前処理は、塗装完成後の不具合や、完成後の仕上がりを綺麗にする為に行う作業です。対象物についた油や異物をシンナーやプレソルなどで拭いたり、ミルスケール(酸化皮膜。一般的に黒皮と言われるもの)や錆などが着いた状態をブラストやサンドペーパー等を使って除去し、完成後に剥がれたり、はじいたり(塗膜に穴やくぼみが出来ること)といった不具合を無くす重要な工程です。

2、下塗り

下塗りは、素材と塗料を密着しやすくする為の作業以外に、錆止め効果のある塗料を塗る作業でもあります。プライマーと言えば、密着しやすくするための塗料ですが、防錆効果の有る物もあり、材料に錆の発生源である水分や酸素などを防ぐ効果の高い樹脂塗料と錆止めの顔料の入ったエポキシ樹脂のプライマーはよく使用されます。このプライマーの前にジンクリッチペイントといった亜鉛末を多く含んだ塗料を塗ったりすることもあり、そのことを重防食塗装と言います。

3、中塗り、上塗り

中塗りでは、膜厚を稼いだり、パテの際が出ないように下地をより整えたりするサフェーサーを塗ります。化粧品でいうところのファンデーションの様な役割です。この工程は内容によっては省かれることもあったり、プライマーとサフェーサーの両方の役割を担うプラサフで一回で済ますこともあります。

上塗りとは仕上げの塗装で一番表の層になる為、自動車等ではメタリックやパールなど様々な色を再現できる塗料、屋外で使用するものなら紫外線から守るため耐候性や汚れの落ち易い塗料、工場などでは耐薬品・耐油性など使用用途にあった塗料を選びます。

4、乾燥・仕上げ

塗り終わった後は塗膜が柔らかく安定していないので、焼付や自然乾燥で乾かし塗料を硬化させ対象物にしっかりと密着させます。完全に乾ききる前に触ると手の指紋が付いたり、ホコリや汚れが着いたりするのでしっかりと乾かす事が必要です。

乾いた後は、スプレーガンでは塗れない部分を刷毛でタッチアップしたり、塗装時に表面に着いたホコリや異物をペーパーやバフを使って磨いたり、コーティング剤を上から塗布したりして美観を高め完成させます。